鍼灸による不妊治療 >> 不妊治療

不妊と鍼灸

中医学から見た不妊症

正常の妊娠は女性では正常の月経と排卵、男性では質の良い精子、そして性交渉で男女の間では精子と卵子の出会う機会を作ること、この三つのポイントが不可欠です。また、受精卵の子宮への移動、着床、順調な発育も結果的に妊娠に影響します。

中医学では妊娠について独特な認識を持っています。体内の臓腑機能の正常と気血の流れの順調度が妊娠を左右していると考えています。腎は体の生命の根元を司るため、男性の精子や女性の卵子の生成に関わります。先天の不足や過労で腎を損なうと、精子の質低下、無排卵や排卵障害などが生じます。

肝は生命の活力を発揮し、精神の安定や気血の流れに関わるため、長期間のストレス、過剰の心配で肝を損なうと、排卵障害、着床障害、男性では精子の活力低下、性生活の不調などが生じます。

心は全身の統合役で、体の協調性と旺盛な勢いを作り出すため、精神不安や寝不足で心を損なうと、本来の備わった体力を妊娠に生かすことができなくて、性生活の不調や妊娠障害の原因になります。

脾胃は体の栄養を作り出し、月経の血や精子卵子の原料を司るため、不規則な食生活、甘いものなどの偏食、間食や夜食で脾胃を損なうと、月経量少、不正性出血、閉経など生理不順や肥満や精子卵子の質低下が生じます。

以上のように、不摂生などの原因により、これらの臓腑機能が低下すると、いずれも不妊症を引き起こします。

不妊に関わる問題の認識

●女性では生理不順、卵子異常、排卵障害、着床障害があげられる。中医的に腎の陰陽維持、肝の疏泄機能の正常、脾の運化に問題があるとされる。

●男性では精子異常(精子の数と活力の異常)、精管障害があげられる。中医学的に腎の基礎力、肝の疏泄機能に問題があるとされる。

●男女では精子抗体陽性、精子卵子の出会うタイミングのズレがあげられる。中医学的に肝の伸びやかな性質の発揮に問題があるとされる。

● 過度のストレスからリラックス状態を取り、気分転換に努める。

● 感情を深めるムードを作り、気持ちよくタイミングを図る。

当院不妊治療の特徴

1、腎の機能アップを大切にする

中医学では、「腎主生殖」。すなわち、腎は生殖機能やホルモンバランスをつかさどると認識しています。腎は加齢とともに機能が次第に低下しますが、不規則な生活や疲労などで腎の働き低下が加速化します。腎の働きがあまり低下しすぎると、精子数が減少し、奇形率が増えやすい。卵子の質が低下し、排卵しにくくなります。 子宮内膜も薄くなったり、硬くなったりして、受精卵が着床しにくくなります。

私が診てきた不妊患者さんでは、腎機能低下の方は意外に多いです。特に40歳前後の方たちは顕著です。鍼灸で太渓、関元、腎兪などのツボを刺激することにより、腎の働きを高め、精子卵子の質がよくなり、子宮粘膜が厚くなり、自然妊娠力が高くなります。

2、生理周期の乱れを調整することに重視する

子宮内膜は女性ホルモンの刺激を受けて、生理周期に合わせて厚くなったり、脱落したり(生理)を繰り返しています。ストレスなどでホルモンのバランスがくずれると、子宮と卵巣の働きも乱れてしまいます。生理周期が不安定になり、経血量も多かったり、少なかったりという不安定状態になります。さらに不妊治療期間、患者さんが落ち込んだり、悲しんだりすると、生理周期の乱れが悪化することも良く見えます。

中医学では、肝臓はストレスに一番関わります。ストレスで肝臓の疏泄機能が低下すると、気血の流れが悪くなり、生理不順・生理痛など一連のトラブルが起こりやすい。鍼灸で肝臓の疏泄機能を整えることにより、ストレスを解消し、ホルモンのバランスが良くなり、生理周期も正常のほうに戻ります。生理不順を治すのは不妊治療の大きな目安です。

西洋医学との相乗効果

鍼灸は体質を改善し、自然妊娠確率を高めるほか、西洋医学の治療を手助けする役割もあります。

現代高度生殖医療が 妊娠できない人を絶望の淵から救い、希望をもたらしてくれました。ただ過剰なホルモン剤を使うことにより、体調が崩れ、卵巣機能が低下して卵子の質が悪くなってしまう方も多くいらっしゃいます。こういう場合は、体調を整えないとなかなか妊娠が難しいと思います。

しかしながら、鍼灸などで体質をきちんと改善し、卵巣と子宮の内環境を整えることにより妊娠率は高くなります。体外授精に何度も失敗したにも関わらず、当院の鍼治療を受け、体質を改善してから、ただ一度の体外授精で成功したケースもたくさんあります。

男性不妊の鍼治療

不妊と言うと女性側に原因があると考えがちですが、男性側のストレスや過労も不妊につながります。

精子について、デンマークからこんな報告があります。1940年に平均1億1300万/mだった精子濃度が、1990年には6600万/mに半減しています。疲労とストレスがひどい日本では、もっと低いでしょう。私が診た患者さんのうち、旦那さんの方が三分の一以上精子が少ない。鍼灸で疲れやストレスを取ることによって精子の数、運動率、奇形率などを改善することが出来ます。男女とも健康であればこそ元気で育てやすい赤ちゃん が生まれてくるので、旦那様とご一緒の受診をお勧めします。

日常生活に注意すべきこと

腎・肝・脾、心の生理機能を正常に維持することは妊娠において重要なため、日常生活に以下の面で気をつける必要がある。

● 基礎体力を作り、規則正しい生活で身体の過度消耗を防ぐ。

● 食事は暴飲暴食を慎み、生もの、冷たいもの、油濃いものをなるべく避ける。

● 睡眠や休養をきちんと取り、毎日すっきりした気分で過ごすようにする。

● 夫婦会話を増やして、相互理解と歩調一致になるように工夫する。

■不妊豆知識

生理周期の測り方

生理が始まってから次の生理が始まる前日まで。
25〜35日までは正常範囲。28日周期のが多いです。

排卵日予測方法

基礎体温の低温相の最後の日から高温相に移行期間は排卵日だと認識されています。
簡単の計算方法は生理周期から高温期の日数を引く、例えば、
生理周期が28日の場合、高温期12〜14日とすると28−12(14)=16(14)日
よって排卵日は14〜16日目となる。
排卵日が近づくと、透明なおりものが増えます。
自分で検査できる検査薬も市販されています
病院で超音波による卵子の大きさを検査してもらうのが最も確実です。

タイミングのあわせ方

予測排卵日にあわせてセックスするのがタイミング法です。
卵子の寿命は1日程度、精子は女性の体内で2〜3日の寿命ですので、予測排卵日の
2〜3日前から(排卵日の前日か、前々日のほうが)チャンスです。
28日周期の場合は周期の12〜13日目が目安です。性交前の3〜4日ほど禁欲期間を
おくと精液の状態が良くなり妊娠しやすくなる。二日間続けてセックスするのは良いでしょう。

女性の年齢と妊娠の関係

20代ならば心配ありませんが、30代からは徐々に妊娠しにくくなり、35歳超えると急激に妊娠は難しくなってしまいます。ですから、なるべく早めに対策をとることが確実な妊娠へとつながります。

不妊治療の開始期間

不妊原因のない夫婦が週に2度セックスしていれば、たいていは2年以内に妊娠するという報告があります。
20代では2〜3年自然に任せても良いでしょうが、30代では1年ほど妊娠に恵まれない場合は不妊治療を考えたほうが良い。

人工授精

男性の精子が少ない、運動率が低いなどの場合や女性の頸管粘液の検査(フーナーテスト)の結果が悪く、タイミング法で妊娠しない場合に行われます。
男性から採取した精液を洗浄濃縮して、良好な精子を集めて子宮内に注入する。受精の有無の確認はできませんが自然妊娠に近い方法です。

体外受精

両方の卵管が閉塞している、抗精子抗体が強陽性などの女性や、元気な精子が極端に少ない男性がタイミング法や一般の人工授精で妊娠しなかった場合に行われます。
卵子と精子の両方を取り出して、体外で人為的に受精させた後、2〜3日間培養したヒト胚を子宮内に移植する方法です。

顕微授精

顕微鏡下で、正常な形、運動性も良好な精子を一匹だけを直接卵子中に送り込んで、受精をさせて、2〜3日間培養したヒト胚を子宮に移植する方法です。